カルロ・スカルパ:素材とディテールへの情熱と、新旧美の調和!

カルロ・スカルパ Carlo_Scarpa 建築家

カルロ・スカルパという名前を聞いたことがありますか?彼はイタリアのヴェネツィア出身の建築家で、素材やディテールにこだわった独創的な作品を残しました。日本の建築や文化にも深い関心を持ち、何度も来日しています。今回は、カルロ・スカルパの生涯と代表作、そして彼の建築の特徴について紹介します。

生涯

カルロ・スカルパは1906年にヴェネツィアに生まれました。彼は職人の親方の下で見習いをしながら、建築に対する理解と技術を身につけました。17歳からは建築家ヴィンチェンツォ・リナルドの事務所で設計活動を始めました。彼はヴェネツィアの美術学校を卒業した後、地元の建築大学の助手となり、後に教授となりました。彼は学生たちに建築の歴史や理論だけでなく、実際の現場や素材に触れることの重要性を教えました。彼は1972年から1974年までヴェネツィア建築大学の学長も務めました。

カルロ・スカルパは日本の建築や文化に魅了され、何度も来日しました。彼は日本の伝統的な建築技法や素材、庭園や茶道などに深い敬意を持ち、自分の作品に取り入れることもありました。彼は1978年に仙台で開催された「カルロ・スカルパ展」の準備のために来日しましたが、その際に階段から足を踏み外して転落し、そのまま亡くなりました。彼は仙台の青葉山墓地に埋葬されています。

代表作

カルロ・スカルパの作品はほとんどが既存の建物の改修やインテリアデザインです。彼は新しい文化やデザインと、昔ながらの伝統や品格の両方に敬意を払って、新旧の美の調和を大切にしました。彼は素材やディテールにこだわり、創造的で個性的な芸術的感性と想像力を発揮しました。彼の作品は季節や歴史といった時間的変化を設計・デザインに捉えたことでも知られています。ここでは、彼の代表作の一部を紹介します。

  • カステルヴェッキオ美術館改修: カステルヴェッキオ美術館は、イタリアのヴェローナにある中世の城塞を改造した美術館です。カルロ・スカルパは1956年から1964年にかけて、この美術館の改修を担当しました。彼は城塞の歴史的な構造や素材を尊重しつつ、現代的な要素や機能を加えました。彼は展示室の床や壁、階段や窓、照明や展示台など、細部にわたってデザインしました。彼は美術品と空間との関係を考え、視線や動線を誘導しました。彼はまた、城塞の外にある古い橋や庭園も改修しました。この作品は、カルロ・スカルパの最高傑作とも言われています。
  • オリヴェッティ社ショールーム: オリヴェッティ社ショウルームは、イタリアのヴェネツィアにあるオフィス機器メーカーのショールームです。カルロ・スカルパは1957年から1958年にかけて、このショウルームのインテリアデザインを担当しました。彼はヴェネツィアの歴史的な建物の一階にある狭い空間を、明るく開放的な空間に変えました。彼は床や壁、天井に異なる素材や色を使い、空間のリズムやコントラストを生み出しました。彼はまた、オリヴェッティ社の製品を展示するためのオリジナルの展示台や棚をデザインしました。彼は製品の形や機能に合わせて、木や金属、ガラスなどの素材を組み合わせました。この作品は、カルロ・スカルパのインテリアデザインの傑作として評価されています。
  • ブリオン家墓地: ブリオン家墓地は、イタリアのトレヴィーゾ県にある墓地です。カルロ・スカルパは1969年から1978年にかけて、オリヴェッティ社の創業者の一族であるブリオン家のために、この墓地の設計をしました。彼は教会の隣にある一角の土地を、ブリオン家の墓所としてだけでなく、一般の人々にも開かれた公園としてデザインしました。彼はコンクリートや石、水、植物などの素材を使って、様々な形や空間を創り出しました。彼はまた、日本の庭園や茶道の要素を取り入れることもありました。彼は墓地の入り口に「この場所は、死者に対する瞑想の場所であると同時に、生者に対する教訓の場所でもある」という言葉を刻みました。この作品は、カルロ・スカルパの遺作となりました。

  >>ブリオン家墓地については別記事で紹介しています。

建築の特徴

カルロ・スカルパの建築の特徴は、以下のようにまとめることができます。

  1. 素材への感性: カルロ・スカルパは素材への感性に豊かな想像力を発揮し、建築をデザインしました。素材の特性や質感を活かし、建築に独自の個性と美しさを与えました。
  2. 新旧美の調和: 彼は新しい文化やデザインと、伝統や品格の調和を重視し、建築に新旧の美を融合させました。これにより、彼の作品は過去と未来の対話を象徴的に表現しています。
  3. 時間的変化の捉え方: カルロ・スカルパは季節や歴史といった時間的変化を建築に捉え、環境や光の変化をデザインに取り入れました。その結果、彼の建築は常に変化する美を持っています。
  4. ディテールへのこだわり: 彼は建築のディテールに特にこだわり、素材の微細な特性を活かして繊細で精巧なディテールを創り出しました。建築のディテールを通じて、人々に驚きや喜びを提供しました。

まとめ

カルロ・スカルパは、素材への情熱と新旧美の調和を通じて、建築の魅力を表現した建築家でした。彼の作品は季節や歴史といった時間的変化を取り入れ、建築の美を永遠に新鮮なものとしました。また、ディテールへの繊細なこだわりは、彼の建築の特徴の一つであり、人々に深い感銘を与えました。カルロ・スカルパの建築は、素材とディテールへの情熱と新旧美の調和の絶妙な融合を体現しています。建築やデザインに興味のある方は、ぜひ彼の作品を訪れて、その美を感じてみてください。

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