【コンクリートの父】オーギュスト・ペレ:新しい技術を芸術的に用いた建築の巨匠!

オーギュスト・ペレ 建築家

フランスの建築家オーギュスト・ペレについて紹介します。ペレは鉄筋コンクリートという新しい技術を芸術的に用いたことで、「コンクリートの父」と呼ばれる人物です。彼の生涯、代表作、建築の特徴について見ていきましょう。

生涯

オーギュスト・ペレ(Auguste Perret)は1874年にベルギーのイクセルで生まれました。彼は富裕な建設業者の家庭に生まれ、建築への情熱を早くから抱きました。若い頃、彼はパリのエコール・デ・ボザールに入学し、そこで優秀な成績を収めましたが、卒業せずに中退しました。この時期から既に建築への情熱が彼を駆り立て、彼のキャリアの幕開けとなりました。

1890年、まだ若干16歳の若さで、彼は最初の建築設計を手がけました。その後、兄弟であるギュスターヴとクロードとともに、父の建設会社を相続しました。しかし、オーギュスト・ペレの建築キャリアは、彼が新たな建築材料である鉄筋コンクリートに興味を持つようになったときに本格的に始まりました。

彼は鉄筋コンクリートに対する情熱と信念を持ち、その素材の可能性を追求しました。1903年、パリ16区に世界初の鉄筋コンクリート造の集合住宅を建設し、この建築が彼のキャリアの出発点となりました。このプロジェクトでは、彼はコンクリートの素材感や表情を生かし、建築の美を引き立てる方法を模索しました。

ペレのキャリアは順調に進み、彼は古典的なシンメトリーやオーダーと鉄筋コンクリート構造の融合を目指し、多くの作品を残しました。その代表作のひとつであるランシーの教会堂では、ゴシックの空間と近代合理主義的な直線が見事に組み合わされています。ペレはコンクリートを剥き出しの状態で仕上げる「打ち放し」やプレキャストコンクリートを多用し、その造形性とテクスチャーにこだわりました。彼の作品は、後の建築家たちに大きな影響を与え、近代建築の新たな方向性を示しました。

第二次世界大戦の後、ペレはル・アーヴルの都市再建において中心的な役割を果たし、プレハブ工法やモジュールの活用、コンクリート構造の革新的な使用などにより、都市を現代的なものとして再建しました。その成果は、現在、ル・アーヴルの市街地が世界遺産に登録されていることからもわかるように、彼の都市計画の優れた評価を受けています。

1954年、パリ16区で亡くなったオーギュスト・ペレは、鉄筋コンクリートを芸術的に用いた建築の巨匠としてその名を刻みました。

代表作

オーギュスト・ペレの代表作について、詳しく説明します。以下の4つの作品を紹介します。

  1. フランクリン街の集合住宅(1903年、パリ16区) 鉄筋コンクリート造による最初期のモダニズム建築。ペレは、コンクリートの素材感や表情を生かした建築を目指し、外観はアール・ヌーヴォー調の装飾を施しました。内部は、鉄筋コンクリートの柱や梁を見せることで、構造の美しさを強調しました。この作品は、ペレの建築家としての出発点となりました。
  2. シャンゼリゼ劇場(1913年、パリ8区) ベルギーの建築家ヴァン・デ・ヴェルデの計画を引き継いで完成させた作品。ペレは、鉄筋コンクリートの構造を用いて、円形の劇場を作りました。外観は、古典的なオーダーやシンメトリーを重視しました。内部は、コンクリートの打ち放しやプレキャストコンクリートを多用しました。この作品は、ペレの芸術性と技術性の高さを示すものです。
  3. ランシーの教会堂(1923年、ル・ランシー) ペレの代表作のひとつで、「コンクリートのサントシャペル」とも呼ばれます。ペレは、鉄筋コンクリートの軽やかさと強度を利用して、ゴシックの空間と近代合理主義的な直線を組み合わせた建築を作りました。外観は、灰色のコンクリート造ですが、内部は、ステンドグラスを通して差し込む緩やかな外光が内部をやさしく照らします。ステンドグラスは、入口付近は黄色、徐々に内陣に近づくにつれて、ピンク、赤、紫と変化していき、そして内陣の美しい青色へと続きます。この作品は、ペレの鉄筋コンクリートによる芸術的な表現の最高傑作です。 >>ランシーの教会堂は別記事で詳しく紹介しています。
  4. ル・アーヴルの市街地(1945年-1954年、ル・アーヴル) 第二次世界大戦で破壊されたル・アーヴルの都市再建におけるペレの役割を示す作品です。ペレは、プレハブ工法やモジュールの活用、コンクリート構造の革新的な使用などにより、ル・アーヴルを現代的な都市として復興させました。市街地には、ペレの設計した教会や市庁舎、文化センターなどがあります。現在、ル・アーヴルの市街地は世界遺産に登録されています。この作品は、ペレの都市計画における高い評価を示すものです。

建築の特徴

ペレの建築の特徴としては、以下の点が挙げられます。

鉄筋コンクリートを芸術的に用いたこと。コンクリートは安価で造形性に富む材料であると考え、その素材感や表情を生かした建築を目指した。 古典的なオーダーやシンメトリーを重視したこと。鉄筋コンクリート構造と古典的な美学を融合させ、均整のとれたファサードや空間を作り出した。

ギリシア建築や日本建築からの影響が見受けられます。フレーム構造や柱頭のデザインなどにその影響が見られ、ペレの建築に独自の特色をもたらしました。また、日本の建築家アントニン・レーモンドとの親交があり、彼の作品にもペレの影響が顕著に表れています。ペレは、伝統的な美学と革新的な材料を融合させ、建築の新たな方向性を模索しました。

まとめ

オーギュスト・ペレは建築界において革新的なアプローチを取り、鉄筋コンクリートを芸術的に用いたことで、近代建築の歴史において重要な位置を占めています。その作品は、新しい素材と古典的な美学の融合により、建築の魅力を再定義しました。もし機会があれば、彼の作品を実際に訪れ、その魅力を堪能してみてください。オーギュスト・ペレの建築は、私たちに建築の可能性と美しさを示唆しています。

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